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遷宮とは何か

20年に1度行われる伊勢神宮の遷宮、

60年に1度行われる出雲大社の遷宮とは何か?

遷宮の目的は何か?

なぜ20年に一度、遷宮を行うのか?

「神の周りを清らかに改めることで神は若返り、その力はよりあらたかなものになる。」

そして私たちはその“御陰(おかげ)”をいただく。

古代から日本人はそうして遷宮を繰り返しながら、

永遠に変わらないものを次の時代へ受け継ぐという

崇高な精神をもって神への思いを新たにしてきました。

2013年、八百万の神が集うふたつの聖地、

伊勢神宮出雲大社が揃って遷宮を行いました。

この世を司る天津神として天照大神を祀る伊勢神宮と、

あの世を司る国津神として大国主大神を祀る出雲大社

古来、天皇が住まう大和の地を挟み、

東に位置する伊勢神宮は朝日を象徴し、

西に位置する出雲大社は夕日を象徴する存在です。

天と地」、「陰と陽」つまり世界の全てを象徴する

ふたつの神社の遷宮が重なったのは、

戦後の日本が高度成長期へと歩み始めた1953年(昭和23年)以来のことです。

混乱が続く平成の今、二社の遷宮が重なったのは

神秘的なめぐり合わせといえるかも知れません。

遷宮とは次代へつなぐ究極のアンチエイジングなのです。

東の伊勢神宮」、「西の出雲大社」

若返った神々のありがたい“御陰(おかげ)”をいただき、

日本人としての精神、そして魂を活性化しましょう。

《 遷宮の目的 》

神社や時代によって様々な解釈があるため、その目的を一概に説明することはできません。

現代の神主としての視点で言えば、御殿を清らかにつくり改めることで、その地に神がはじめて鎮座されたときの時間と空間を再現して原点に回帰し、神への感謝や畏敬の念を新たにするためではないかと思います。

《 遷宮はいつ頃始まったか 》

神社の歴史=遷宮の歴史

いつはじまったという正確な年代はわかっていませんが、神社ができた頃から意識していたであろうと推測できます。

「日本書紀」に出雲の修造についての記述があることから、少なくとも7世紀には遷宮が行われていたと考えられます。

7世紀後半には、伊勢神宮の20年に一度の式年遷宮が天武天皇によって定められ、それに基づいて、690年に第1回目の遷宮が持統天皇によって行われました。

◎私たちの日常生活とどのような関係があるか

人間は生まれて死ぬという直線的な時間軸の一方で、円環する時間軸も持っています。

たとえばお正月。

神棚を掃除してお札を改め、新たな一年を迎えます。

その後、春夏秋冬と時間軸が一巡すると、同じ事を繰り返します。

お正月に神の周りを清らかにする事で、毎年原点に立ち返っているのです。

ほかにも誕生日や結婚記念日、創立記念日など、日常生活における原点回帰の意識が遷宮につながります。

《 具体的にどのようなことを行うのか 》

神社によって異なりますが、遷宮に先立って御神体を隠しながら御仮殿に遷し、御殿や神の周りの品々をつくり改めたのち御神体を御殿にお戻しし、丁重なお祭りでもって神への感謝や畏敬の念を表すというのが基本的なかたちです。

神社では神への奉仕である様々なお祭りを行いますが、遷宮はその最たるものです。

丁重さを極めたお祭りによって、神の威を増し、よみがえった力で私たちをお守り頂くのです。

《 全国どこの神社でも遷宮は行っているのか 》

村里の氏神を祀る小さな神社や道端の祠から、伊勢神宮や出雲大社のような大きな神社まで、神が宿られる場所の修造や造替ーつまり遷宮は行われています。

御殿そのものを新築する大規模なものもあれば、屋根や柱など傷んだ個所の修復、神の御装束や調度品を新たにするものなど、規模や内容はさまざまですが、神の周りを清らかに改め、丁重なお祭りで感謝や畏敬の念を表すというかたちは同じです。

《 取り壊した建物の古い木材はどうするか 》

大きな神社では、古くなった建材を全国ゆかりの神社に下賜するケースが見られます。

伊勢神宮の今回の遷宮にあたっては、その一部は東日本大震災の被災地にも贈られると言われてます。

神が用いていた装飾品は畏れおおいものとして、かつては大地に返すことも珍しくありませんでしたが、現在では貴重な文化財や歴史的資料として大切に保管され、展覧会などで一般公開されることもあります。

《 遷宮のタイミング 》

20年ごとに式年遷宮を行うことは、『皇太神宮儀式帳こうたいじんぐうぎしきちょう』に「常に二十箇年を限りて一度、新宮に遷し奉る」、『延喜太神宮式えんぎだいじんぐうしき』に「おおよそ太神宮は廿年はたとせ一度ひとたび、正殿宝殿及び外幣殿を造り替えよ」と記載があります。

しかし、その理由について、はっきりとした記載はありません。

推測されるのは、遷宮が20年ごとに行われることで、唯一神明造という建築技術や御装束神宝などの調度品を現在に伝えることができ、今でもいつでも新しく、いつまでも変わらない姿を望むことができます。

これにより「神と人、そして国家」に永遠を目指したのだと考えられます。

また、伊勢神宮のように定められた周期(式年)で遷宮を行う神社もありますが、不定期に行う神社がほとんどです。

多くは社殿の傷みなどにより、つくり改める必要が生じた時期に遷宮を行います。

《 生まれ変わるのは建物だけか 》

遷宮によって神も若返って力を増し、私たち人間はそれまで以上に“御陰(おかげ)”をいただく事になるのです。

また、若々しく生まれ変わった神への心尽くしのお祭りは最上の“ハレ”の場です。

その非日常感によって人間は清らかな心を取り戻し、魂を安寧にし、活性化するのです。

つまり、「遷宮は人間の命を蘇らせる」ことにつながります。

こうした生命の連続性を認識することこそが、遷宮の本質だと考えます。